どんなサービス?
対象路線の入口に設置された光ビーコンから、その先の道なり方向の信号サイクル情報を受信し、対象交差点に車両が差し掛かるタイミングを予測して、運転支援情報を車内に提示するためのインフラとその仕組みの総称です。
対応車両は?
現在、ホンダ車をはじめ、搭載車両や搭載カーナビが徐々に増えています。
ホンダ
- アコード 標準装備
- フリード メーカーオプションカーナビ+ディーラーオプションの光ビーコンユニット+マルチインフォメーションディスプレイ装着車
- オデッセイ メーカーオプションカーナビ+ディーラーオプションの光ビーコンユニット装着車
- ステップワゴン メーカーオプションカーナビ+ディーラーオプションのVICS光ビーコンユニット装着車
※上記ホンダ車は、対象路線の対象交差点において、
- 「信号通過支援」
- 「赤信号減速支援」
- 「発進遅れ防止支援」
を行います。
トヨタ
2017年度版地図データに更新された純正ディーラーオプションT-Connectナビ
ただし、ETC車載器(光ビーコンモジュール付)をオプション装着している必要があります。
※上記トヨタのカーナビでは、
- 「信号連携減速案内」
- 「信号待ち発進準備案内」
- 「信号連携減速案内」
を行います。
市販カーナビ
三菱電機 DIATONE ナビ(NR-MZ200シリーズ他)
対応する光ビーコンを接続する必要があります。
※DIATONE ナビでは、
- 「青信号までの残り時間表示」(発進遅れ支援)
を行います。
Kenwood 彩速ナビ(MDV-Z905他)
高度化光ビーコン対応ETC2.0車載器(ETC-N7000)と接続する必要があります。
※上記、彩速ナビでは、
- 「信号通過支援」
- 「赤信号減速支援」
- 「発進遅れ支援」
を行います。
信号情報活用支援システムが想定する機能
このシステムには、以下のような支援アプリケーションが想定されています。
対応車種によって、下記すべての機能が搭載されるわけではありません。
1.「信号通過支援」
次の信号を青で安全に通過することができるように、ドライバーに推奨速度を提示する機能。
制限速度内の走行で、青で通過できそうな場合に提示されます。
2.「赤信号減速支援」
このまま制限速度内で走行しても、次の信号が赤で信号待ちになることが予想される場合に、あらかじめ減速をドライバーに促す機能。
3.「発進遅れ防止支援」
交差点で赤信号で待っているときに、青になるタイミングを提示してスムーズな発進を促す機能。
3.1 「アイドリングストップ解除」
青に切り替わるタイミングを予測して、アイドリングストップを解除することによって、発進遅れを防ぐアプリケーションにも利用可能です。
4.「アイドリングストップ支援」
赤信号で停止してから、次の青信号までの時間を予測して、信号待ちが長いときはアイドリングストップを行い、短いときはアイドリングストップしないように制御する機能。
※一般に、アイドリング時間が5秒より短いときはアイドリングストップしない方が燃費がよいそうです。
どんな仕組み?
直線(みちなり)路線でのサービス
http://www.vics.or.jp/know/service/tsps.html の中段あたりにある「信号情報活用運転支援システム(TSPS)対象路線情報」から適宜、土地勘のある地域の地図を見てください。
VICSのTSPS対応路線図にある地図上に示されているオレンジ色の線が対象路線です。
矢印の始点にある●の地点に設置された光ビーコンで、その進行方向の路線の先にある信号機の情報を提供しています。
その対象路線を矢印の始点から終点の方向にまっすぐ走っていく場合に、基本的にその範囲に存在する交差点の信号機についてサービスが行われます。
ただし、対象路線上の全ての信号機で、必ずしもサービスが行われるわけではありません。
サービス路線上ならどんな信号機にも対応する?
途中から曲がってきたら?
サービスを提供する光ビーコン(上記●)の下を通ったときに、データが受信されます。
そのため、対象路線上の途中の交差点から流入してきた場合には、サービスを受けることができません。
技術的な課題は?
この信号情報活用支援システムですが、あまり詳しい情報がネット上にありません。
そこでいろいろと調べてみました。
信号情報活用運転支援システムについては、「一般社団法人 UTMS協会」で評価や仕様の管理がされているようですが、下記の経済産業省のライブラリから、過去のシステム評価の報告書をネット上で見ることができます。
経済産業省データカタログサイト:「信号情報等のリアルタイム活用技術等の開発及び実証」
下記に挙げる課題は、この平成28年の報告書から想定されるものを筆者がピックアップしたものです。
そのため現在までに何らかの対策がすでにシステムに講じられ、改善されている可能性があることをお断りしておきます。
以下、参考まで。信号機のタイミング制御って、意外に複雑なことをしているようです。
・重要交差点での信号制御
信号機の制御方式にはいくつか種類があるようですが、そのうち「重要交差点」と呼ばれる専用の信号制御をする交差点があります。
文字通り、交通量の多い重要な交差点で行われている信号制御の方法のことを指すのですが、
この「重要交差点」と言われるところでは、信号サイクルの1サイクル分しかタイミング情報が提供されないようです。
というのは、「毎回1サイクル毎に信号の制御時間を交通事情に合わせて変更している」ということのようです。
もし、信号情報を受け取った後、対象の重要交差点に差し掛かるまでに、渋滞などでモタモタしてしまい、時間が経過して次の信号サイクルに入ってしまうと、再度信号情報を取得することができない(再度、引き返して光ビーコンの下を通り直すわけにはいかない)ため、重要交差点でサービスができなくなることが考えられます。
そもそもあまり渋滞の激しいところでは、このシステムはあまり活用できないように思われます。
・感応交差点での信号制御
押しボタン式とか、前後交差点の交通量に応じて、信号切り替えのタイミングが適応的に変化する交差点が特に都市部などでは比較的多く存在すると思われます。
このような交差点の信号機は、感応型信号機と呼ばれ、正確な信号切り替えタイミングを予測することができず、厳密なサービスが提供できない場合が考えられます。「最大/最小時間」というように幅を持った数値として信号データがビーコンから提供されているようです。
※要するに、上記●の地点で信号情報をもらった後、対象となる交差点に差し掛かるまでの間に、信号の切り替えタイミングが適応的に変化するというわけです。この変化をあらかじめ見越して「最大/最小」時間が送られてくるようですが、これではやはり正確な切り替えタイミングはわかりません。
まとめ
最近、対応車両が徐々に増加してきた「信号情報活用運転支援システム」について解説しました。
カーメーカーその他の宣伝広告を見ていると、実際にどんなものであるかの詳細な説明がなく、過大な期待を持ってしまう印象を受けます。
しかしながら我々消費者は、現在の交通インフラやこれらの仕組みを正しく理解し、何ができるのか納得してから購入すべきと感じます。
すでに26都道府県で対応を始めているこの信号情報活用運転支援システムですが、日本には上記で説明したような「重要交差点」や「感応式交差点」が特に都市部で数多く存在しているようです。
具体的な数や割合はわかりませんが、この信号情報活用支援システムにおいて、実際にどのくらいの恩恵を受けられるのか、購入前に体感できるのが望ましいと思います。
信号情報をインフラから受信する仕組みは、この他にトヨタがプリウスなどに搭載しているITS Connectにも採用されていますが、こちらは対象交差点において路車間通信システム(インフラから車へ電波で)で送信されており、「信号待ち発進準備案内」に対応しています。
交差点に差し掛かるだいぶ手前から、このような電波で信号データを受信できる仕組みになっていれば、いろいろと応用が効くのですが、まだそういう交通インフラは、日本では完成していないのが現状です。
こういったシステムは、もしもあまり役に立たないものであれば、買わな(使わな)ければそれで済むものなのですが、インフラ側はなんらかの税金?で作られていると考えると、他人ごとでは済まされず、きちんと使えるものにして我々国民に還元してもらわないと、損した気分になるのは筆者だけではないはずです。
さて、このシステムはどうなのでしょうか?
すでにお持ちの方は、是非ご意見を聞かせていただきたいと思います。
【最近思うこと】(2019年2月追記)
完全自動運転の実現を目指して、政府や自動車メーカー各社、サプライヤーが一緒になって技術開発を進めています。将来の自動運転車両は、どうやって目の前の信号の状態を把握するのでしょうか?
画像認識で信号色を把握するのは確かに可能かもしれませんね。たとえば、変なところに位置する信号機であっても、その信号の設置位置情報をデータベースと照合して、その交差点ではどの信号をカメラで捕らえるべきか判断すればなんとかなりそうです。
でもやはり、ITSコネクトのように、V2X技術で信号情報を送ってくれれば、車両側の判断も簡単確実ですし、何秒後に切り替わるなどのタイミング情報も取得可能となるでしょう。