ドクターヘリの「D-callネット」とは?
以前 こちらの記事 で、自動車事故による緊急時の救急医療システムの1つとしてヘリコプターを活用した仕組みの試験運用について紹介しました。
これは「D-call net」と呼ばれるもので、試験運用期間を終え、2018年6月から本格運用を開始しました。
本記事では、この「D-call net」 を車で利用する仕組みと、トヨタ・ホンダが採用している「HELPネット」サービスとの関係について詳しく紹介します。
AACNとは?
まず、この一連のサービスを受けるためには、AACN(Advanced Automatic Colligion Notificaton system)と呼ばれる仕組みが車両に装着されている必要があります。この仕組みの動作の流れを以下に解説します。
1)衝突によるエアバッグの展開
車が事故を起こしてしまった/もしくは事故に遭遇したときに、大きな衝突であればエアバッグが展開します。
2)センサー情報の送信
エアバッグに連動して、位置情報や衝突の方向、衝突による速度変化やシートベルトの有無といったセンサー情報を、通信回線によって管理センターに自動的に送信します。
※車の仕様によっては、自動的に送信せず、オペレーターコールボタンがユーザーによって押されたタイミングで初めて送信されるものもあるようです。(主にホンダ車)
3)オペレーターとの接続
管理センターがデータを受け取取ると同時に、オペレーターが車両の電話回線に接続します。
4)緊急通報
ユーザーが事故によるダメージで、もしもオペレーターからの呼びかけに応答することができない場合などは、重大事故であるリスクを考え、オペレーターが消防に緊急通報をします。
このとき、管理センターで受信した車両データから、乗員のダメージや致死率/重大事故の可能性をコンピューターで推測し、緊急度に応じて最寄りのドクターヘリが出動するというものです。
また緊急データは全国730カ所にある全消防本部に対して、送信することが可能になったそうです。
2018年6月現在、このドクターヘリを配備する道府県は31。そして42の病院がこのネットワークの協力病院となりました。
※東京都内の場合は、ヘリが発着できる場所が十分にないため、救急車による救援となるようです。
緊急コールシステムの役割
1)クルマに搭載されたAACNシステム
2)ヘリを利用した病院ネットワーク(D-call net)
を紹介しましたが、これらをつなぐ「緊急コールシステム」の存在も重要です。
少なくとも日本では、車が直接消防にデータやメッセージなどによる自動通報をすることが許されていないようです。
(もちろん、運転者や搭乗者が自分で電話をかけて通報することはできます。)
そのため運転者に代わり、緊急コールシステムのオペレーターが、必要に応じて消防に通報する仕組みが必要で、これを行っているのが、HELPネットと呼ばれる仕組みです。
トヨタとホンダの対応車両においては、ヘルプネットに登録・入会することでこのサービスを受けることが可能となります。
ホンダの場合は、インターナビの1つの機能としてこのHELPネットサービスが位置づけられているようです。
現在のところ、D-callネットと連携した緊急通報サービスを行っているのは、HELPネットだけです。
トヨタやホンダのHELPネットサービス対応車であれば、事故時の緊急のケースにおいて、ヘリを使った救助が行われる可能性があります。
現在、このHELPネットに続き、「プレミアエイド」や「ボッシュサービスソリューション」もD-call netに接続するための準備を進めているのだそうです。
プレミアエイドは、BMWのSOSコールの業務を行っていますし、ボッシュサービスソリューションズは、AudiやMercedesの同様のサービスを行っているようです。
これらの緊急コールサービスが、D-call netに接続すれば、トヨタやホンダだけではなく、これらのメーカー車両においても、致死率の高い激しいダメージを負うような自動車事故時に、迅速な人命救助により人の命を救うことができるようになります。
また、ボッシュのecallサービスにおいては、シガーライターに挿すだけでサービスを受けることができる、後付けのソリューションも合わせもっています。
これならば、上記のようなメーカーのサービス対応車両でなくとも、簡単にサービスを受けることができるようになります。
まとめ
日本における、AACNとD-call netの連携サービスの特徴は、以下の通りです。
1)エアバック展開時の車両情報の(自動/手動)送信
2)上記データのコンピューター解析による致死率・重大事故判断とデータ・結果の即時転送
3)上記仕組みの構築によるヘリ出動判断までの時間短縮
交通重大事故における人命救助を確実に行うため、日本でもこのような仕組みが整備され、今後さらなる普及に向けて採用車種が増えていくことが予想されます。