カーナビ向け交通情報システム
過去の日本の交通情報を歴史を振り返ってみると、ラジオ放送による「道路交通情報」や、テレビ放送による「日本道路交通情報センター」からの短いニュース番組が思い起こされます。
今日では、交通情報がインターネットで取得可能だったり、スマホのマップ上でも渋滞情報を簡単に見ることができます。
では、カーナビから取得することができる交通情報はどこから来るのでしょう?VICSに始まって、現在はVICS WIDEというサービスが追加されています。
こういったサービスの説明は、HP等をみても結構シンプルな解説しかなく、わかりにくいことも多いので、本記事では、これらの自動車向け交通情報サービスについて、少し別の視点から解説します。
VICSとVICS WIDE
2015年からサービスが開始されたVICS WIDE。多くのカーナビがVICS WIDEに対応していきています。まずはその元となるVICSについて解説します。
VICSとは?
VICSは、Vehicle Information and Communication Systemの略で、日本の自動車向け情報システムのことです。一般財団法人の「VICS センター」が情報配信をしています。
一方、「日本道路交通情報センター」というところからも、交通情報が配信されていますが、こちらの情報を、自動車で取り扱いやすい形にして提供しているのが、「VICS」と考えれるとわかりやすいのではないかと思います。
VICSの配信メディア
VICSは、VICSセンターから主にFM多重放送として送信されています。
FM以外では、「高速道路のITSインフラから送信される情報」、「一般道の光ビーコンから送信される情報」、そして「オンデマンドVICSとしてネットワークから配信される情報」があります。各配信メディアによって送られる情報が異なりますが、共通に送られる内容もあります。
VICSの放送電波はどこから送られる?
各都道府県にある、NHKのFMラジオ放送局から送信されています。各都道府県ごとにローカルな道路情報を配信しています。
※走行中の車が、県境を跨(また)ぐ場合も想定されているため、県境付近の隣接県の道路情報も含まれているようです。
VICS WIDEとは?
VICS WIDEは、VICSのFM多重放送から送信されるサービスが、伝送容量が増えた新しい仕様で別途送信されるようになったものです。
VICSの従来のFM多重による放送がなくなったわけではなく、2015年からそれと平行してVICS WIDEによる交通情報データの配信サービスが行われています。
VICS WIDEのサービス
1.渋滞情報の配信
渋滞情報というのは、カーナビの地図上に出る赤やオレンジの線です。道路上に設置された車両感知器を利用して収集した道路の混み具合を視覚的に見ることができるようにするための情報です。これは従来のVICSと同じです。順調とわれる青い線が表示されるナビも多くありますが、これは渋滞が発生していないことを示すものです。
2.各都道府県レベルの文字列交通情報
従来のVICSと同じ(例>XX→XX 車線規制)
3.各都道府県レベルの画像・イラストによる交通情報
従来とVICSと同じ(例>首都高の簡易渋滞マップ等)
4.旅行時間情報の配信
ある道路の一定区間毎に、車両が通過するのに要する時間がデータとして配信されます。通常は、この旅行時間情報を元にルート検索が行われます。
※従来のVICSでは、一般道の旅行時間情報は、光ビーコン装着車のみに提供されるサービスとなっていました。そのため、地図上に渋滞の赤い線が出ていても、光ビーコンをつけていないと、迂回するようなルートを作成することができなかったのです。
5.道路閉鎖や入口閉鎖、工事情報等(交通規制・交通障害)
従来のVICSと同様に送られてきます。
6.駐車場情報
従来のVICSと同様に送られてきます。
7.警戒情報(VICS WIDEのみ)
気象庁が作成している噴火や津波などの警告情報が配信されます。FM電波による配信ですから、電波さえ届けば、どこにいても受信することができます。
8.大雨情報(VICS WIDEのみ)
日本では、レーダーを利用してゲリラ豪雨のような大雨が、どの辺りで降っているのかかなり正確に測定することができるそうです。この大雨データをメッシュ(格子)状のエリア情報として配信しています。
VICS WIDE以外(FM以外)のVICS交通情報データ配信
高速道路ITSインフラから取得できるVICS情報
従来のDSRC対応と呼ばれるETC車載器、もしくはETC2.0対応のETC車載器がDSRC通信を利用して主に高速道路で取得可能な交通情報です。
高速道路向けの渋滞情報・旅行時間情報のほか、文字列による交通情報、画像・イラストによる交通情報や警告情報が配信されています。
特に、文字列によるものや画像・イラストによるものは、
カーナビ連携型ETC2.0車載器を利用の場合に、視覚的に表示されます。
→【関連記事】2018年 ETC2.0のメリットは?(一時退出の社会実験編)
※従来は、電波ビーコンと呼ばれる2.4GHz帯の通信で高速道路の情報を取得していました。これが、5.9GHzのITS(DSRC)通信となりETCの課金をするときの通信と共通化できるようになりました。
2.4GHz帯の電波ビーコンは、まもなくサービスを終了し、ITSに一本化されます。
※国土交通省の告知はこちらです。
光ビーコンから取得できるVICS情報
光ビーコンからは、主に一般道路の交通情報(渋滞・旅行時間・イベント)や文字列による交通情報、そして画像・イラストによる交通情報や警告情報が配信されています。
現在では、路上に高度化光ビーコンといわれるものが従来の光ビーコンに徐々に置き換わって設置されてきています。(まだ全数置き換わったわけではないようです。)
この新しいタイプの光ビーコンは、信号情報活用運転支援システムにも対応可能です。
(高度化光ビーコンがあるからといって、必ず信号情報活用運転支援システムが設置されているというわけではありません。)
そして、光ビーコン付ETC2.0車載器といわれる機器によって、カーナビと連携して受信することが可能です。(最近のものはすべて高度化光ビーコンに対応しています。)
※カーナビに直接接続する単体の光ビーコンモジュールは、最近ではなくなってしまったようです。
→【関連記事】光ビーコンから提供される信号情報活用運転支援システムとは?
オンラインによるもの
オンデマンドVICSと呼ばれる、オンラインから配信されるVICS交通情報もあります。
→【関連記事】Internaviにも使われているオンデマンドVICSとは?
総括
VICS WIDEについて解説しました。
VICS WIDEは、カーナビなどに内蔵されるFM多重放送の受信装置によって、必要な範囲の十分な交通情報が取得可能です。(但し、FM電波のため、その車が位置する県とその周辺地域の情報が主となります。FMによる情報は、各県ごとに異なる情報が配信されています。)
走行中に県を跨げば、その県の新たなデータが受信されるというわけです。
ETC2.0車載器もカーナビ連携タイプならば、そちらからも高速道路に関する交通情報や警告情報が取得可能です。また、高速のゲートやインフラ下を通過したときに、位置情報を補正することもできます(カーナビに依存)ので、位置性能の向上にも一役買っています。
プローブシステムとの違い
最近よく使われるようになったオンラインのプローブ交通情報システムですが、これはたくさんの車の動きをみて渋滞の様子を把握するシステムです。
一方、国土交通省や警察庁、NEXCOなどが管理している車両検知器は、プローブ付車が実際にその道路を通行しなくても渋滞かどうかがわかりますし、また、車が1台も通らなくても道路が順調かどうかわかります。
実際のプローブ交通情報システム
プローブ情報システムというのは、プローブ付車が実際にその道路を走ってはじめて、渋滞情報を取得することができるというものです。
そのため、今日のオンラインのプローブ交通情報システムは、プローブの情報だけでなく、車両検知器からの情報や、道路工事・道路閉鎖情報などのデータと統合され、初めて役に立つデータとして配信されるというわけです。